No.51 生成AIで在宅の仕事はどう変わったか 道具にする仕事、AIを教える仕事、AIに置き換わる仕事
総務省の令和8年版情報通信白書では、日本で生成AIを使ったことがある人は58.8%(前年26.7%)、60代では33.5%だった。クラウドソーシング大手は、簡単なライティングやデザインの依頼が減り、AIの導入や業務改善の依頼が増えたと決算説明で述べている。在宅の仕事は「AIを道具に使う」「AIの導入を手伝う、教える」「AIに置き換わりつつある」の三つに分けて考えると見通しやすい。
本文と出典
あらまし
生成AI(文章や画像を指示どおりに作るAI)が広まり、在宅でできる仕事の中身が動いている。
数字で確かめられるのは、使う人が一年で倍以上に増えたこと、そして仲介サイトの依頼の種類が入れ替わりつつあることの二つである。
「AIで誰でも稼げる」という宣伝は多いが、公的な統計や会社の公式発表から言えるのはそこまでだ。
どんな仕事か
生成AIに関わる在宅の仕事は、次の三つに分けられる。
一つ目はAIを道具に使う仕事で、文章、画像、動画、翻訳などをAIの助けを借りて作り、仕上げと確認は人が受け持つ。お客は企業やブログの運営者、ストックフォトの買い手などである。
二つ目はAIそのものを扱う仕事で、会社や個人にAIの使い方を教える、業務にAIを組み込む手伝いをする、AIの回答を評価して改善の材料を作る、といったものだ。
三つ目はAIに置き換わりつつある仕事で、短い記事の量産、簡単なバナーやロゴ、決まった形のデータ入力などがここに入る。
同じ「ライティング」でも、事実確認や取材を伴うものは一つ目、型どおりの文章を数多く並べるものは三つ目に寄る。
始め方
・1. まず無料のAIサービス(ChatGPT、Claude、Gemini などはいずれも無料版がある)を一か月ほど使い、自分の仕事の何が速くなるかを試す
・2. クラウドソーシング(ランサーズ、クラウドワークスなど)に登録し、AI関連の依頼の中身と条件を読む。登録は無料で、本人確認書類が要る
・3. 依頼文に「AI利用の可否」が書かれているかを確かめる。書かれていなければ受ける前に質問する
・4. 有料版は、無料版の上限に当たってから考える
お金の流れ
AIを道具に使う仕事の売上は、従来の受託と同じく、依頼主から仲介サイトを通じて報酬が入り、サイトの手数料が引かれる。
出ていくお金として新たに加わるのがAIの利用料で、2026年10月時点の公式料金ページでは、個人向けの有料版はおおむね月1,400円〜3,000円台が中心である(詳しくは id 56)。
AIの利用料は事業の経費になりうるが、私用と兼ねる場合の扱いは税務署か税理士に確かめる。
白書の数字で見る広がり
総務省の令和8年版情報通信白書は、2026年1〜2月の個人向け調査の結果を載せている。
生成AIサービスを一つでも「使っている(過去使ったことがある)」と答えた人は日本で58.8%で、前年の調査の26.7%から大きく増えた。
ただし今回から15〜19歳が調査対象に加わっており、20歳以上に限ると52.2%である。
年代別では15〜19歳が91.7%、60〜69歳が33.5%と、若いほど高い。
中身はテキスト生成(文章のやりとり)が55.0%と大半で、画像、動画、音声、音楽などを使った人は比較的少ないと白書は書いている。
米国とドイツは75.6%、中国は93.6%で、どの国も日本より高い。
使わない理由では「自分の生活や業務に必要ない」が42.4%、「使い方がわからない」が38.8%で、後者の割合は4か国で日本がいちばん高かった。
仲介サイトの依頼に起きていること
ランサーズの社長は2026年8月14日の決算説明会で、AIの影響で単純作業、簡単なデザイン、簡単なライティングの依頼は明らかに減っている一方、システム開発、業務改善、AIを前提にした経営の相談は大きく増えていると述べた。
同じ説明会で、AIの分野の依頼数は何倍にも伸びているとも話している。
クラウドワークスは2026年9月期第2四半期の決算説明資料で、AIの技術者や専門家と企業をつなぐ「AIクラウドワークス」を始めると発表した。
両社とも、伸びているのは企業のAI導入を手伝う側の仕事だと説明しており、文章や画像を安く大量に作る仕事が増えているとは言っていない。
依頼一件あたりの単価がどう変わったかを示す公式の統計は、今回は見つからなかった。
向く人・向かない人
向くのは、もともと何かの仕事の経験があり、それをAIで速くできる人である。
長年の職業経験(経理、営業、地域の事情、趣味の専門知識)は、AIが出した答えの誤りを見抜く力になる。
パソコンで文章を打ち、メールやファイルのやりとりができれば、AIの操作そのものは難しくない。
向かないのは、「AIに任せれば中身を知らなくても作れる」と考える人だ。AIの誤りを見抜けないまま納品すると、責任は納品した人が負う。
72歳で一人、自宅で始める場合も、一つ目の「AIを道具に使う仕事」は体力を使わずに始められる。二つ目の「教える、導入を手伝う」は、企業とのやりとりが増え、新しい道具を学び続ける根気が要る。
落とし穴
「AIで月◯万円」とうたう高額な講座やサポート契約の相談が増えている(id 54)。
国民生活センターは2026年9月16日、AI講座を含むビジネス講座のトラブルに注意を呼びかけた。
依頼主がAIの利用を禁止しているのに使って納品すると、契約違反になりうる。
AIに顧客の個人情報や秘密を入力すると、情報漏れの心配がある。
くらさんの考察
白書の数字からは、日本では使う人が急に増えたものの、多くはまだ文章のやりとりにとどまっていると読める。
仲介サイトの説明を合わせると、「AIでも作れるもの」の値段は下がり、「AIを使ってどう役立てるか」を考える仕事に需要が移っていると考えられる。
ただし後者は経営者の発言であり、件数の内訳は公表されていない。
ジージへの問いかけ
・長年のお仕事や暮らしで身につけた知識のうち、AIの答えを確かめるのに使えそうなものは何だと思いますか
・60代の利用経験が33.5%という数字を、多いと見ますか、少ないと見ますか
・AIに置き換わりつつある仕事を、あえて人の手でやる意味はあるでしょうか
出典
・総務省 令和8年版情報通信白書 第Ⅰ部第1章第1節(PDF) https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r08/pdf/n1110000.pdf
・総務省 令和8年版情報通信白書の概要(PDF) https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r08/pdf/01point.pdf
・ランサーズ株式会社 2027年3月期第1四半期決算説明会(書き起こし・PDF) https://www2.jpx.co.jp/disc/44840/140120260817521907.pdf
・株式会社クラウドワークス 2026年9月期第2四半期決算説明資料(PDF) https://www2.jpx.co.jp/disc/39000/140120260514533991.pdf
・国民生活センター「ビジネス講座のトラブルにご注意」(2026年9月16日) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260916_3.html
この記事を読んで浮かんだ疑問は、運営者ジージが仕事QAでくらさんに質問し、答えをそこに載せていきます。