No.31 海外EC(越境EC)の全体像 モールに出すか自分の店を持つか、日本から個人が海外へ売る道
越境ECは、海外の消費者に日本からネットで売る商売で、eBay などのモールに出す型と Shopify で自分の店を作る型がある。経済産業省の2026年10月公表の調査では、2025年に米国の消費者が日本から越境ECで買った額は1兆6,527億円、中国の消費者は2兆7,560億円と推計された。米国の少額輸入の免税停止で、送り方と関税の扱いが大きく変わっている。
本文と出典
あらまし
越境EC(えっきょういーしー)とは、国境を越えたネット販売のことだ。
日本に住む個人が、海外の消費者に品物を売り、国際郵便や国際宅配便で届ける。
売り場の作り方は大きく二つに分かれる。
一つは eBay、Etsy、Amazon のような海外のモール(大きな売り場)に出品する型、もう一つは Shopify などで自分の店を作る型である。
この記事では、市場の大きさと売れている品物の傾向、二つの型の違いを、2026年10月時点の公的な統計とモールの発表で整理する。
どんな仕事か
売るのは日本で手に入る品物である。
中古のカメラ、トレーディングカード、ブランドの服や小物のように、海外では手に入りにくいか、日本のほうが状態のよい品が多いものが中心になる。
自分の手作り品を Etsy で売る人もいる。
お客は米国、英国、豪州などに住む個人で、英語の商品説明を読み、ドルなどの外貨で払う。
出品、問い合わせへの返事、梱包、発送、関税の手続きまで、一人で受け持つことになる。
始め方
・1. 売り場を選ぶ。モール型なら eBay(中古品や収集品に強い)、Etsy(手作り品とビンテージ)、Amazon(新品を大量に)のどれかから始める人が多い
・2. 売り場のアカウントを作る。本人確認書類と、売上を受け取る口座(モールによっては Payoneer という海外送金の口座)を用意する
・3. 品物を決め、英語で商品説明を書き、写真を撮って出品する
・4. 送り方を決める。日本郵便の国際郵便、eBay の SpeedPAK のような専用の配送、国際宅配便(クーリエ)がある
・5. 米国あては関税の事前申告が要るので、手順を先に確かめておく
お金の流れ
売上は外貨で入り、モールの手数料が引かれる。
手数料はモールごとに違い、eBay は売上の1割強、Etsy は取引手数料6.5%に決済手数料が加わる(くわしくは個別の記事で扱う)。
外貨を円に替えるときの為替の手数料、海外送料、米国あてなら関税も、売値の中から考えなければならない。
輸出した品物は日本の消費税が免除される制度があり、課税事業者なら仕入れにかかった消費税を取り戻せる場合がある。
市場の大きさ
経済産業省は毎年「電子商取引に関する市場調査」を出しており、2026年10月21日に2025年分を公表した。
それによると、2025年に米国の消費者が日本から越境ECで買った額は1兆6,527億円、中国の消費者が日本の事業者から買った額は2兆7,560億円(前年比4.5%増)と推計されている。
逆に日本の消費者が米中から買った額は4,553億円で、日本は買うより売るほうがずっと大きい。
報告書は、米国や欧州で2025年に少額輸入品の免税制度が撤廃や見直しされたことにも触れている。
ただし、この数字は大企業の販売も含む推計で、個人の売上の見込みを示すものではない。
売れている品物の傾向
イーベイ・ジャパンは2026年3月9日に「2025年間 越境ECレポート」を公表した。
日本のセラーの売上で伸びが大きかったのはトレーディングカードで、前年比約1.74倍だった。
同社は、2026年は英国と豪州向けで日本製の中古カメラ、高級腕時計、トレーディングカードの伸びが目立つとしている。
報道によると、カテゴリーの売上1位は前年に続き「レディースアパレル&バッグ ブランド小物」だった。
向く人・向かない人
向くのは、ある分野の品物に詳しく、本物か偽物か、状態の良し悪しを自分で見分けられる人だ。
カメラや時計の趣味が長い人は、その知識がそのまま値付けと説明に生きる。
英語は翻訳ツールで補えるが、問い合わせや苦情に毎日返事をする根気は要る。
向かないのは、梱包や郵便局への持ち込みが体力的に負担な人、関税や規約の変更を追いかけるのが苦手な人である。
自宅で一人でもできるが、シニアなら最初は月に数点の小さな規模で始め、手間を測るのが現実的だ。
落とし穴
米国は2025年8月29日からすべての国の少額輸入品の免税を止めており、関税を誰がどう払うかで取引のもめごとが増えた。
国際郵便では送れない品物(香水、スプレー缶、モバイルバッテリーなど)がある。
ブランド品の偽物や、著作権を侵害する品物を売るとアカウントを止められる。
「越境ECで月◯万円」とうたう塾や情報商材の宣伝は多いが、根拠となる数字が示されていることは少ない。
くらさんの考察
市場は伸びているが、伸びの多くは企業の販売であり、個人がその分け前を得られるかは品物の目利きしだいと考えられる。
米国の制度変更で、関税を売り手が前払いする形が広がり、価格の決め方が以前より難しくなった。
米国以外(英国、豪州、欧州)に目を向けることが、2026年の個人の売り手には一つの選択肢になると考えられる。
ジージへの問いかけ
ジージが詳しい品物で、海外の人が欲しがりそうなものは思い当たるでしょうか。
英語の問い合わせに毎日答える手間を、続けられそうだと思いますか。
最初はモールに出すのと、自分の店を持つのと、どちらが合っていると思いますか。
出典
・経済産業省「令和7年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」(2026年10月21日) https://www.meti.go.jp/press/2026/10/20261021001.html
・経済産業省「令和7年度電子商取引に関する市場調査報告書」 https://www.meti.go.jp/files/000006536.pdf
・イーベイ・ジャパン「2025年間 越境ECレポート」(2026年3月9日) https://wwwcojp2.ebay.com/release/20260309
・ECのミカタ「eBay、2025年間越境ECレポートを公開」 https://ecnomikata.com/ecnews/cross-borderec/49835/
・米国税関・国境警備局(CBP)暫定最終規則 2026-12669 https://public-inspection.federalregister.gov/2026-12669.pdf
・日本郵便「国際郵便で送れないもの」 https://www.post.japanpost.jp/service/send/oversea/attention/restriction/
この記事を読んで浮かんだ疑問は、運営者ジージが仕事QAでくらさんに質問し、答えをそこに載せていきます。