No.224 ネットで売る人に要る表示と決まり 特定商取引法の表記、古物商許可、酒や食品や化粧品の許可
個人でもネットで反復して売れば特定商取引法の「通信販売」の事業者になり、氏名、住所、電話番号などを表示する。請求があれば遅滞なく伝える旨を表示して省略する方法もある。中古品を仕入れて売るなら古物商許可、酒の通信販売、手作り食品、手作り化粧品にはそれぞれ免許や許可が要る。
本文と出典
あらまし
自分のネットショップやハンドメイド作品の販売を始めると、売る側として守る決まりが出てくる。代表的なのが特定商取引法(特商法)にもとづく表示で、扱う品物によっては古物商許可や、酒、食品、化粧品の免許や許可も要る。消費者庁、警視庁、国税庁、厚生労働省、東京都の案内で2026年10月時点の内容を確かめた。
どんな仕事か
対象は、Shopify などで作った自分のショップ、ハンドメイドのマーケット、フリマアプリでの継続的な販売など、ネットで品物を売る仕事全般である。特商法ガイドによると、営利の意思を持って反復継続して取引をすれば、個人でも特商法上の販売業者になる。営利の意思は本人の気持ちではなく客観的に判断される。
手続き
・1. 自分が「販売業者」に当たるかを確かめる。不用品をたまに売るだけか、仕入れや製作をして繰り返し売るのか。
・2. 販売業者なら、ショップに特商法の表示を載せる。
・3. 扱う品物ごとに必要な許可を確かめる。中古品の仕入れ販売は警察(公安委員会)、酒は税務署、食品は保健所、化粧品は都道府県の薬務担当が窓口になる。
・4. 許可を得たら、その表示義務も守る。
特定商取引法に基づく表記
通信販売の広告に表示する主な事項は、販売価格と送料、代金の支払時期と方法、商品の引渡時期、返品の可否と条件、事業者の氏名(名称)、住所、電話番号などである。特商法ガイドの解説では、個人事業者の氏名は戸籍上の氏名か商業登記した商号で、通称や屋号、サイト名だけでは認められない。住所は現に活動している住所を番地まで正確に書き、私書箱だけの表示は認められない。電話番号は確実に連絡が取れる番号である必要があるが、夜間などに留守番電話を使うのは構わない。
自宅の住所や電話番号を載せたくない個人には、二つの方法が示されている。一つは、消費者から請求があれば表示事項を書面や電子メールで「遅滞なく」提供すると広告に表示し、実際にそうできる体制を整えたうえで、氏名、住所、電話番号の表示を省略する方法である。「遅滞なく」とは、申し込みを決める前に十分な時間の余裕をもって提供することをいう。もう一つは、販売の場を提供するプラットフォーム事業者やバーチャルオフィスの住所と電話番号を表示する方法で、連絡先として機能することについて合意があり、その事業者が本人の現住所と本人名義の電話番号を把握していることなどが条件である。返品に関する事項など、省略できない項目もある。
古物商許可
警察庁の解釈通達によると、小売店などから一度でも一般消費者の手に渡った物は、未使用品でも古物に当たる。古物を買い取って売る営業をするには古物商許可が要る。警視庁の案内では、申請手数料は19,000円で、個人の場合は略歴書、本籍が載った住民票の写し、誓約書、身分証明書などが要る。許可を受けると、買い取りのときに相手の住所、氏名、職業、年齢を確かめる義務があり、ネットで売る場合は、許可を受けた公安委員会名、許可証番号、氏名をサイトに表示しなければならない。フリマアプリでも、古物商であることを表示せずに取引はできない。同じ通達では、営業とは営利の目的で同じ種類の行為を反復継続して行うことで、副業や内職として行う場合も含まれる。古物を売るだけで買い取りをしない形は規制の対象から外れ、フリマサイトでの取引が古物営業に当たるかは、取引の実態や営利性に照らして個別に判断するとされている。
酒、食品、化粧品
酒をネットで2都道府県以上の消費者に売るには、税務署の「通信販売酒類小売業免許」が要る。国税庁の手引き(令和8年9月改訂)によると、標準処理期間は2か月で、免許1件につき登録免許税3万円を納める。売れる酒は輸入酒と、年間の品目ごとの課税移出数量が3,000キロリットル未満の酒造会社の国産酒などに限られ、20歳未満の者に売らない仕組みも求められる。
手作りの菓子や総菜を売るには、食品衛生法の営業許可や営業届出が要る。厚生労働省の案内では、菓子製造業、そうざい製造業など32業種が許可の対象で、許可が要らない営業の多くも2021年6月から保健所への届出が必要になった。自宅の台所でそのまま作って売ることは、施設の基準を満たさない限り難しい。
化粧品は、東京都の案内によると、製造販売業の許可などを取らずに作った手作りの化粧水、クリーム、顔や手に使う石けんは販売できない。ロット番号を消したり、全成分表示を削ったり、外箱の表示を外して中身だけ売ったりすることもできない。
向く人・向かない人
自宅の住所を出したくない人は、特商法の省略やバーチャルオフィスの条件を確かめてから始めるとよい。中古品の仕入れ販売や食品の販売は、許可の手続きと義務が重く、片手間では回しにくい。
落とし穴
特商法の表示が不十分だと、業務改善の指示や業務停止命令などの行政処分の対象になる。無許可の古物営業や、許可を取らずに作った化粧品の販売は法律違反である。ハンドメイドの石けんや化粧水は、作品として出品しやすいだけに見落とされやすい。品物が規制の対象かどうか迷ったら、売る前に窓口に聞くのが確実である。
くらさんの考察
自宅で一人で売る人にとって、特商法の住所と電話番号の表示がいちばんの心理的な壁になると考えられる。請求があれば開示する方法とバーチャルオフィスの方法は、どちらも「確実に連絡が取れること」が前提で、表示を減らしても責任が減るわけではない。許可が要る品物は、許可を取る手間そのものが参入の壁になっており、手作り品なら雑貨や小物のように許可の要らない品物から始めるのが現実的である。
ジージへの問いかけ
・ジージがネットで売るとしたら、自宅の住所を載せることに抵抗がありますか。
・中古品を仕入れて売るのと、自分で作った物を売るのとでは、どちらが自分に合うと思いますか。
・許可の手続きが要る品物は、手間に見合う売上が見込めると思いますか。
出典
・消費者庁 特定商取引法ガイド 通信販売 https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/
・消費者庁 特定商取引法ガイド 通信販売広告について https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/advertising.html
・消費者庁 特定商取引法ガイド 通信販売広告Q&A https://www.no-trouble.caa.go.jp/qa/advertising.html
・警視庁 古物商許可申請をされる方へ https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/tetsuzuki/kobutsu/kaisetsu/kobutsu_shinsei.html
・警察庁 古物営業関係法令の解釈基準等について(令和8年5月) https://www.npa.go.jp/laws/notification/seian/seiki/20260514kobutsukaishaku.pdf
・国税庁 通信販売酒類小売業免許申請の手引(令和8年9月改訂) https://www.nta.go.jp/taxes/sake/menkyo/tebiki/8285.pdf
・厚生労働省 リーフレット「令和3年6月1日から営業届出が必要になる場合があります!」 https://www.mhlw.go.jp/content/11131500/000739154.pdf
・東京都保健医療局 フリマ・オークションサイト(アプリ)で許可なく医薬品等を販売することはできません https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/anzen/iyaku/koukokukisei/zenpanfrima/furimakisei
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