No.59新着 AIが作った文章・画像を仕事で出すときの表示と責任 クラウドワークスは「隠さない」、KDPは「AI生成」だけ申告を求める
AIを使ったことを取引先や販売先にどう伝えるかは、場所ごとに決まりが違う。クラウドワークスは利用を禁じず、可否の確認と「隠さない」やり取りを受注者に求める。Amazon KDP は、AIが作った文章・画像・翻訳だけを申告対象とし、AIで手直ししただけなら申告は要らないとする。note については公式の規定を開いて確かめられなかった。
本文と出典
あらまし
2026年11月時点で、公式のページを開いて確かめた範囲を書く。
AIで作った文章や画像を仕事で出すとき、「AIを使ったと伝えるか」「誰が責任を負うか」は、出す先ごとに決まりが違う。
著作権の考え方は id 57、画像素材サイトの受け入れ条件は id 53、YouTube の開示は id 55、請負ライティングでの発注者側の条件の例は id 52、入力する情報の扱いは id 58 にある。この記事は、それらに書いていない二つの場所、クラウドソーシング大手のクラウドワークスと、Amazon KDP の申告の決まりを取り上げる。
どんな仕事か
特定の仕事ではなく、AIを使う在宅の仕事すべてに関わる確認事項である。
文章や画像を納める受託でも、本を出す出版でも、「AIを使ったことを相手に伝える」場面が出てくる。伝え方の決まりは、お客か販売先が決める。
始め方
・1. 仕事を受ける前に、依頼文とプラットフォームの規約で、AI利用の可否と申告の決まりを探す
・2. 依頼文に定めがなければ、「AIを下書きや校正に使ってよいか」を依頼主に質問し、答えをメッセージに残す
・3. 本を出すなら、KDP のコンテンツガイドラインで「AI生成」と「AIアシスト」のどちらに当たるかを作品ごとに分ける
・4. どの工程でAIを使ったかを、自分用にメモしておく
お金の流れ
この記事で扱う決まりは、直接の料金には関わらない。ただし、決まりを破ると、報酬が出ない、評価が下がる、出版した本が下げられるなどの不利益につながりうる。具体的な罰則の内容は、今回開いたページには書かれていなかった。
クラウドワークスの「AIポリシー」
クラウドワークスは、2024年7月31日付の公式ブログ「クラウドワークス上でのAI活用に関するポリシー」を出している(ページに更新日の記載は見つからなかった)。
AIの利用そのものは禁止せず、使ってよいかどうかは受注者と発注者の取り決めに委ねる、という立場である。
受注者に求める事項は六つ並んでいる。主なものを言い換えると、利用の可否を先に確かめて、利用を隠さないこと。AIを使っても使わなくても、合意した品質を守ること。依頼の詳細やメッセージに書かれたAI利用のルールに従うこと。機密性の高い情報を外部のAIツールに入れるときは取り扱いに注意すること。知的財産権と機密情報に気を配ること、である。
発注者にも求めている。合理的な説明なく、AIを使ったことだけを理由に値下げしたり、納品物を受け取らなかったり、不当に低く評価したりしないこと。AIを使ったかどうかを受注者に確かめないまま、不利益を与えないこと。受注者の同意なく、納品物やポートフォリオをAIの学習に使わないこと、である。
違反への対応については、ポリシーは「利用規約及び法令等に則り判断し」て進めるとだけ書き、具体的な罰則は示していない。
著作権の帰属のような個別の決まりも、このページには含まれていなかった。
KDP の申告
Amazon KDP のコンテンツガイドライン(日本語版)には、AI生成コンテンツの申告の決まりがある。
同ガイドラインは、AI生成を「AI ベースのツールによって作成されるテキスト、画像、または翻訳」と定義している。後から大幅に編集しても、AI生成とみなされる。表紙、本文の画像、アートワークも対象に入る。
新しい本を出すとき、または既存の本を編集して再出版するときは、AI生成コンテンツについて申告が要る。
一方、自分で作った内容をAIで編集・改良・エラーチェックした場合や、アイデア出しにだけAIを使って最終的な文章や画像を自分で作った場合は「AIアシスト」にあたり、申告は不要とされる。AIツールの使い方や過程を知らせる必要もない。
申告の入力欄の場所と、申告の内容が読者に表示されるかどうかは、今回開いたページでは確かめられなかった。
どちらの場合も、AI生成・AIアシストのコンテンツは、すべてのコンテンツガイドラインに従い、知的財産権を守らなければならない。申告は責任の免除ではなく、責任は出版者に残る。
二つの決まりの違い
KDP は「AIが作ったものか」という成果物の作り方で線を引く。大幅に手を入れても、元がAI生成なら申告の対象である。
クラウドワークスは、AIの使い方で線を引かない。代わりに、利用を相手に隠さず、合意した範囲を守るという、やり取りの姿勢を求める。申告の様式はポリシーに示されていない。
同じ作業でも、販売先によって「申告が要る」「要らない」が分かれる。たとえばAIに下書きを書かせて自分で書き直した本は、KDP の定義では「AI生成」にあたるおそれがある。確実な線は文言から読み取れないので、迷うときは KDP に問い合わせるのが確実だと考えられる。
ランサーズについて
ランサーズの「提案ガイドライン」のページを開いたが、生成AIに関する記述は見つからなかった。ただし、これは開いたページ一つの範囲の話である。ランサーズ全体でAIの決まりがないと言えるわけではなく、利用規約や個別の依頼の条件を確かめる必要がある。
向く人・向かない人
決まりを読んでから仕事を受け、「聞いて、記録に残す」習慣のある人に向く。規約は長いが、AI、生成といった語で探せば、該当部分は見つけやすい。
向かないのは、AIを使ったことを聞かれたくなくて、あいまいにしておく人である。クラウドワークスのポリシーが「隠さない」ことを求めている以上、依頼主から問われたときに事実を言えない状態は避けたほうがよい。
落とし穴
・AI利用の定めがない依頼で、確認せずにAIを使う。後から依頼主の方針と食い違うことがある。
・KDP で「手直ししたから申告は要らない」と自分で判断する。大幅に編集しても、元がAI生成なら申告の対象である。
・依頼主から預かった未公開の資料を、外部のAIに入力する。ポリシーは機密情報の取り扱いに注意を求めている(id 58)。
・クラウドワークスのポリシーは2024年のものである。現在の運用は、利用規約やヘルプで確かめる。
評価の分かれる点
AIを使った事実を、聞かれなくても毎回伝えるべきかは、決まった基準がない。依頼主によっては、成果物の質だけを見る。ポリシーの立場も、取り決めに委ねるというものである。
くらさんの考察
場所ごとに決まりが違うので、「AIを使ったか」より前に「相手はどの線で聞いているか」を確かめるのが先だと考えられる。
申告の有無とは別に、出した文章や画像の誤りや権利侵害の責任は、出した人に残る。KDP のガイドラインも、AIアシストの場合を含めて出版者の責任を書いている。
note のような発信の場所は、公式の規定を開いて確かめられなかったので、この記事では扱っていない。使う前にご自身で確認してほしい。
ジージへの問いかけ
・AIに下書きを書かせて自分で直した文章は、「自分が書いた」と言えると思いますか。
・依頼主に「AIを使ってよいですか」と先に聞くのは、気が引けますか。それとも安心ですか。
・本を出すとき、AIで作った部分を読者に知らせたほうがよいと思いますか。
出典
・クラウドワークス「クラウドワークス上でのAI活用に関するポリシー(通称:AIポリシー)」(2024年7月31日) https://blog.crowdworks.jp/archives/5811/
・Amazon KDP「コンテンツ ガイドライン」 https://kdp.amazon.co.jp/ja_JP/help/topic/G200672390
・ランサーズ「提案ガイドライン」 https://www.lancers.jp/help/safety/lancer_guideline
この記事を読んで浮かんだ疑問は、運営者ジージが仕事QAでくらさんに質問し、答えをそこに載せていきます。