No.52 AIで文章の仕事 ライティングの請負は、事実確認と責任を引き受ける仕事になった
クラウドソーシング大手は、簡単なライティングの依頼が減っていると決算説明で述べている。発注側には大阪市のように、受注者が生成AIを使うなら事前の確認と承認を求め、出力の事実確認と権利の確認を受注者の責任とする例がある。AIで書いた文章でも、誤りや権利侵害の責任は書いた人が負う。
本文と出典
あらまし
ブログ記事や商品説明などを請け負うライティングは、在宅の仕事の代表だった。
生成AIが短い文章を一瞬で書けるようになり、この仕事の値打ちは「文字を埋めること」から「中身が正しいと請け合うこと」に移りつつある。
発注側も、AIを使ってよいか、使うならどう申告するかを契約で決めるようになってきた。
どんな仕事か
企業のサイトの記事、ブログ、商品の説明文、メールマガジン、取材記事などを、決まった字数と納期で書いて納める。
お客は企業、ウェブ制作会社、ブログやサイトの運営者などで、クラウドソーシングで募集されることが多い。
AIを使う場合、構成案づくり、下書き、言い換え、誤字の点検などをAIに手伝わせ、事実確認と仕上げを人がする形が一般的である。
始め方
・1. クラウドソーシングに登録し、本人確認を済ませる(登録は無料)
・2. 自分の得意分野(介護、園芸、地域の歴史、車など)で書いた見本の文章を2〜3本用意する
・3. 依頼文で、AI利用の可否、字数、単価、修正の回数、著作権の扱い(納品後に依頼主へ移るか)を確かめる
・4. AI利用の定めがない依頼は、受ける前に「AIを下書きに使ってよいか」を質問し、答えを記録に残す
お金の流れ
報酬は依頼主が仲介サイトに預け、検収のあとで受注者に支払われ、サイトの手数料が差し引かれる。
単価は「1文字◯円」か「1記事◯円」で示されることが多い。
AIの普及で単価がどれだけ下がったかを示す公的な統計や、仲介サイトの公式な数字は、今回の調べでは見つからなかった。
確かめられたのは、ランサーズの社長が2026年8月14日の決算説明会で「簡単なライティング業務」が減っていると述べたことである。
出ていくお金はAIの利用料で、無料版で足りることも多い。
発注側がAI利用を決める例
大阪市は、委託先が生成AIを使う場合の「生成AI利用に関する特記仕様書」を入札の資料として公開している。
そこでは、受注者がAIを使う前に所定の様式で市に確認を求めて承認を受けること、再委託先や下請けも同じ扱いであることが定められている。
入力の面では、秘密や個人情報を入れないこと、入力を学習に使わせない設定にすること、規約への同意だけで誰でも使える公開型のAIは使わないことが求められる。
出力の面では、誤りや偏りがないか、根拠と事実関係を自ら確かめること、第三者の権利を侵していないか自ら確かめること、出力は検討の材料として加筆修正して使うことが定められている。
加筆修正せずに公表するなら、AIを使って作った旨を明らかにするよう求めている。
自治体の委託は個人の副業とは規模が違うが、民間の発注者が契約に入れる条件もこの方向に近いと考えられる。
検索サイトはAIの文章をどう見るか
ブログ記事の依頼主の多くは、Google 検索で上位に出ることを狙っている。
Google のスパムポリシーは「大量生成されたコンテンツの不正使用」を挙げ、作り方を問わず、検索順位を操作するために価値の低いページを大量に作ることを違反としている。
例として、生成AIなどで読者に何の価値も足さないページを量産することが明記されている。
AIで書いたこと自体が違反になるのではなく、読者の役に立たない量産が問題とされる。
向く人・向かない人
向くのは、特定の分野に詳しく、資料を読んで事実を確かめる手間を惜しまない人である。
AIは、もっともらしい誤り(存在しない統計、古い制度、架空の出典)を書くことがある。これを見抜けるかどうかが、AIを使うライターの腕になる。
タイピングが遅くても、AIに下書きをさせて直す形なら手の負担は軽い。
向かないのは、AIの出力をそのまま貼って納める人、締め切りの連絡や修正の依頼に返事が遅れがちな人だ。
72歳で始めるなら、地元の情報や長年の職業経験のような、AIが知らない一次の知識を持つ分野を選ぶのがよい。
落とし穴
AI禁止の依頼でAIを使い、発覚すると報酬の不払いや評価の低下、アカウント停止につながりうる。
AIの文章が既存の記事に似てしまうと、著作権侵害を問われることがある(考え方は id 57)。
依頼主から預かった未公開の情報をAIに入力すると、秘密保持の約束に反するおそれがある。
「AIで記事を量産して月◯万円」という教材は根拠が示されていないことが多い。
評価の分かれる点
AIを下書きに使ったことを依頼主に毎回伝えるべきかは、契約しだいで、業界の決まった基準はない。
大阪市のように申告と承認を求める発注者もあれば、成果物の質だけを見る発注者もある。
くらさんの考察
文章の量で稼ぐ仕事は縮み、確かめる、取材する、体験を書く、といった人にしかできない部分に値段が付く方向だと考えられる。
「AIを使ったか」より「誤りの責任を負えるか」が問われるので、出典を確かめる習慣のある人には、AIはむしろ追い風になりうる。
ジージへの問いかけ
・AIの下書きを使うなら、そのことを依頼主に必ず伝えるべきだと思いますか
・ジージが書くとしたら、AIが知らないどんな話を書けるでしょうか
・事実確認にかかる時間を考えると、文字単価の安い仕事を受ける意味はあるでしょうか
出典
・大阪市「生成AI利用に関する特記仕様書」(PDF) https://www.city.osaka.lg.jp/templates/proposal_hattyuuannkenn/cmsfiles/contents/0000687/687650/08_seiseiAI.pdf
・ランサーズ株式会社 2027年3月期第1四半期決算説明会(書き起こし・PDF) https://www2.jpx.co.jp/disc/44840/140120260817521907.pdf
・Google 検索セントラル「Google ウェブ検索のスパムに関するポリシー」 https://developers.google.com/search/docs/essentials/spam-policies?hl=ja
この記事を読んで浮かんだ疑問は、運営者ジージが仕事QAでくらさんに質問し、答えをそこに載せていきます。