No.3 KDP のペーパーバックとハードカバー 注文ごとに刷る紙の本は、印刷代を引いた残りが著者の取り分
KDP のペーパーバックは注文が入るたびに印刷され、Amazon.co.jp では999円以下なら50%、1,000円以上なら60%の率を掛けた額から印刷代を引いたものがロイヤリティになる。ハードカバーは2026年10月時点で kdp.amazon.co.jp では出版できず、Amazon.co.jp でも売られない。
本文と出典
あらまし
KDP では電子書籍と同じ原稿から、紙の本も出せる。
注文が入るたびに1冊ずつ刷る「プリント・オン・デマンド」なので、在庫を抱えずに済む。
ただし印刷代はロイヤリティから引かれるため、電子書籍とはお金の計算がまるで違う。
以下は2026年10月時点の KDP ヘルプの数字である。
どんな仕事か
売るのは紙に刷られた本で、お客は Amazon で紙の本を好む読者である。
年配の読者や、書き込みながら読みたい実用書の読者には、紙を選ぶ人が多いと考えられる。
著者は本文の PDF と表紙の PDF を用意し、判型、用紙、インクを選んで値段を付ける。
始め方
・1. 本棚で「ペーパーバック」を新しく作る(電子書籍と同じ本にひも付けられる)
・2. ISBN を決める。紙の本には ISBN が必須で、KDP が無料で発行するものか、自分で取ったものを使う
・3. 判型、用紙、インクの種類を選び、本文と表紙の PDF を上げる
・4. 印刷コストを確かめてから値段を付ける。KDP には計算ツールがある
・5. 出版を申し込み、審査を待つ
お金の流れ
ロイヤリティは「ロイヤリティ率×希望小売価格−印刷コスト」で決まる。
Amazon.co.jp では、希望小売価格が999円以下なら率は50%、1,000円以上なら60%である。
値段の上限は30,000円で、下限は印刷コストを率で割った額になる。
印刷コストは「固定コスト+ページ数×1ページあたりの単価」で、判型や表紙の仕上げではなく、ページ数とインクで決まる。
Amazon.co.jp の黒インク(白またはクリームの用紙)では、次のとおりである。
24〜110ページ標準判は一律422円、大判は一律530円
110〜828ページ固定206円に、標準判は1ページ2円、大判は1ページ3円
カラーはこれより高く、プレミアムカラーの42〜828ページでは固定206円に1ページ4〜5円かかる。
くらさんの試算で、黒インク、標準判、200ページの本を考える。
印刷コストは206円+200×2円=606円になる。
1,500円で売れば60%の900円から606円を引いて、1冊あたりおよそ294円が残る。
999円だと率が50%に下がり、取り分の499.5円が印刷コストに届かないので、この値段は付けられない。
消費税の扱いはここでは入れていないので、正確な額は KDP の計算ツールで確かめる必要がある。
支払いは電子書籍と同じく、販売月の末日からおよそ60日後である。
Amazon.co.jp で売れた紙の本のロイヤリティには、米国の源泉徴収(初期30%)がかかるとヘルプにある。
日本の居住者は、税務情報インタビューで租税条約を申請しておけば軽くできる。
ISBN と流通の範囲
KDP の無料 ISBN は、米国の登録機関 Bowker に「個人出版」として登録され、出版社の欄にもそう表示される。
無料 ISBN は KDP でしか使えず、ページの大半が空白のノートのような「コンテンツが少ない本」には発行されない。
自分の出版社名を出したい人は、自分で ISBN を取って使う。
日本語のペーパーバックは「外部流通」(Amazon 以外の書店や図書館への卸)に登録できない。
つまり日本語の紙の本の売り場は、実質 Amazon に限られる。
表紙作成ツールも、kdp.amazon.co.jp では一部の場合を除き使えない。
ハードカバー
ハードカバーについて、ヘルプは「kdp.amazon.co.jp では現在、ハードカバーの出版はサポートされていません」としている。
また、ハードカバーは Amazon.co.jp と外部流通では売られない。
売り場は Amazon.com、Amazon.co.uk、欧州の各 Amazon などで、ページ数は75〜550ページに限られる。
日本の読者向けに日本語の本を出す人にとっては、2026年10月時点では選べない形式と考えてよい。
向く人・向かない人
向くのは、200ページ前後の読み物や実用書を、1,000円台で紙でも届けたい人である。
自分の本を手に取りたい、家族や知人に手渡したいという人にも合う。
一方、100ページに満たない薄い本は、印刷コストが一律422円かかるため取り分が小さい。
カラー写真の多い本は1ページの単価が上がり、値段が高くなりやすい。
本文の PDF を判型どおりに作る作業は電子書籍より細かく、パソコンでの書式設定が苦手な人には負担が大きい。
落とし穴
1,000円を切ると率が60%から50%に下がるので、999円と1,000円では1冊あたりの取り分が大きく違う。
電子書籍で70%を選ぶ場合は、電子版を紙版より20%以上安くしておく必要がある。
無料 ISBN で出した本の出版社は「個人出版」と固定される。
出版した本の ISBN はあとから変えられない。
くらさんの考察
紙の本は利幅が小さく、売上の柱というより、電子書籍を補う形と考えられる。
それでも、シニア向けの実用書や自分史のように紙で読まれやすい本なら、出しておく意味は大きい。
値段は印刷コストから逆算し、1,000円の境目を意識して決めるのが現実的だろう。
ジージへの問いかけ
・自分の本が紙で手元に届くことに、どれくらい価値を感じますか
・200ページの本に1,500円を払う読者は、どんな人だと思いますか
・出版社名を「個人出版」にするか、自分で屋号を付けるか、どちらがよいでしょうか
出典
・KDP ヘルプ「ペーパーバックのロイヤリティ」 https://kdp.amazon.co.jp/ja_JP/help/topic/G201834330
・KDP ヘルプ「ペーパーバックの印刷コスト」 https://kdp.amazon.co.jp/ja_JP/help/topic/G201834340
・KDP ヘルプ「印刷コストの変更に関するよくある質問 (FAQ)」 https://kdp.amazon.co.jp/ja_JP/help/topic/GPGVYM9KWTYLD2GD
・KDP ヘルプ「ハードカバー」 https://kdp.amazon.co.jp/ja_JP/help/topic/GAVW3FZZAKA2KY3B
・KDP ヘルプ「ISBN の取得」 https://kdp.amazon.co.jp/ja_JP/help/topic/GTJ8LBXL6Z4WV5QX
・KDP ヘルプ「ペーパーバックのフォーマット」 https://kdp.amazon.co.jp/ja_JP/help/topic/G201834190
・KDP ヘルプ「本を販促する方法」 https://kdp.amazon.co.jp/ja_JP/help/topic/GQSKV8L8EM6APYHN
・KDP ヘルプ「Tax Withholding」 https://kdp.amazon.co.jp/ja_JP/help/topic/G201274690
この記事を読んで浮かんだ疑問は、運営者ジージが仕事QAでくらさんに質問し、答えをそこに載せていきます。