No.206 自宅で稼ぐ人の健康保険 国民健康保険の保険料は前年の所得で決まる、家族の扶養に入れる収入の目安
会社を辞めて自宅で稼ぐ人は、国民健康保険に入るか、会社員の家族の健康保険の被扶養者になるかのどちらかになる。国保の保険料は前年の所得をもとに自治体が決め、大阪府内は2026年度(令和8年度)から子ども分も加わった府内統一の料率である。被扶養者になれる収入の目安は原則として年間130万円未満で、自営の収入は必要経費を引いた額で見る。
本文と出典
あらまし
自宅で仕事を始めると、健康保険をどうするかという問題が出てくる。選べる道は大きく二つある。自分で国民健康保険(国保)に入って保険料を払うか、会社員の家族が入っている健康保険の被扶養者になって自分の保険料をゼロにするかである。
どちらになるかは自分では選べない。被扶養者になれる収入の範囲に収まるかどうかで決まる。2026年10月時点で、大阪府、箕面市、泉南市、日本年金機構、厚生労働省の案内を開いて確かめた内容をまとめる。制度は年度ごとに変わるので、実際の手続きの前に自治体の窓口か加入先に確かめてほしい。
どんな仕事か
この記事は特定の仕事ではなく、Kindle出版、ネット販売、在宅の受託など、自宅で収入を得る人すべてに関わる保険の話である。
大阪府の案内では、国保の対象の例として「お店などを個人で経営している人」が挙がっている。一方、職場の健康保険に入っている人は、扶養家族として入っている場合を含めて、国保に加入する義務がない。つまり、家族の被扶養者になれるなら国保には入らない。
国保の保険料のしくみ
国保の保険料は、加入者の前年の所得をもとに市区町村が算定する。箕面市の令和8年度の案内では、令和7年中の所得が令和8年度の保険料の基礎になる。所得は収入から必要経費などを引いた額である。税金の計算で使う医療費控除や社会保険料控除、扶養控除は、国保の所得割の計算には使えない。
保険料は三つの部分でできている。所得に応じて払う「所得割」、加入者の人数に応じた「均等割」、1世帯ごとにかかる「平等割」である。所得割は、前年の総所得金額等から基礎控除43万円を引いた額に料率を掛けて出す。さらに医療分、後期高齢者支援金分、40歳から64歳だけにかかる介護分、令和8年度から加わった子ども分の4区分を別々に計算し、合計する。区分ごとに年間の上限額が決まっている。
大阪府は府内の保険料を統一しており、所得と世帯構成が同じなら府内のどこに住んでも同じ額になると案内している。令和8年度の府の標準保険料率は、医療分が所得割9.50%・均等割34,990円・平等割33,908円で、上限は66万円である。後期高齢者支援金分は3.06%・11,191円・10,845円(上限26万円)、介護分は2.60%・18,682円(平等割なし、上限17万円)、子ども分は0.28%・1,841円(平等割なし、上限3万円)となっている。泉南市の案内ページにも同じ数字が載っている。
ただし、全国の自治体が同じ方式とは限らない。算定の方式も料率も自治体ごとに決めるもので、ここに書いた数字は大阪府内の令和8年度のものにすぎない。
数字と計算の例
前年の所得が100万円の人を考える。基礎控除43万円を引くと57万円で、医療分の所得割は57万円に9.50%を掛けた54,150円になる。ここに均等割34,990円と、世帯に1人だけなら平等割33,908円が加わり、医療分だけで合計123,048円である。支援金分などが別に加わるので、年間の保険料はこれより大きくなる。
この例は、1人世帯で医療分だけを計算した試算である。実際の額は、世帯の人数、年齢、軽減の有無で変わる。市の窓口には試算を頼める。
所得が低い世帯には、均等割と平等割を減らす軽減がある。箕面市の案内によれば、軽減の基準は7割・5割・2割の三段階で、たとえば7割軽減は、世帯の軽減判定所得が「43万円+10万円×(給与所得者等の人数-1)」以下の場合である。
家族の被扶養者になれる収入
会社員の家族が入っている健康保険(協会けんぽなど)の被扶養者になれるのは、日本国内に住所があり、被保険者に主として生計を維持されている人である。収入の条件は、日本年金機構の案内によると、年間収入が130万円未満(60歳以上、または一定の障害がある人は180万円未満)であること。同居なら被保険者の収入の2分の1未満、別居なら被保険者からの仕送り額未満であることも求められる。2025年10月1日以降の認定では、19歳以上23歳未満の人(被保険者の配偶者を除く)の基準が150万円未満になっている。
収入は、過去の実績ではなく、被扶養者になる時点から先の1年間の見込みで判断する。自営業の収入は、事業にかかった必要経費を引いた額で見ると、日本年金機構の案内に書かれている。公的年金や失業給付も収入に数える。
2026年4月1日からは、給与収入だけの人について、労働条件通知書などに書かれた賃金から見込まれる年収で判断する取り扱いが始まった。この方式を使うには「給与収入のみである」という申立てが必要で、契約期間が1年未満の場合や、シフト制などで時間や手当の額がはっきりしない場合は使えない。事業収入がある人には当てはまらない取り扱いなので、自宅で仕事をする人は従来どおり、見込みの事業所得で判断されると考えられる。
75歳以上の場合
75歳以上の人と、一定の障害があると認められた65歳以上の人は、後期高齢者医療制度に入る(大阪府後期高齢者医療広域連合の案内)。厚生労働省の案内では、この制度の保険料は、収入にかかわらず払う均等割と、収入に応じた所得割でできていると説明されている。問い合わせ先は後期高齢者医療広域連合か市区町村の窓口である。
この制度の被保険者になった人は、家族の健康保険の被扶養者ではいられなくなる。日本年金機構の案内に、後期高齢者医療の被保険者は被扶養者になれないと書かれている。保険料の軽減の細かい条件は、今回確かめられなかった。
向く人・向かない人
家族に会社員がいて、自分の事業所得を年130万円未満に抑えられる人は、被扶養者になる道がある。ただし、収入の見込みが超えると外れるので、売上が伸びる時期は注意が要る。逆に、収入が見込める人は、最初から国保に入る前提で、保険料を毎年の経費として組み込んでおくほうが落ち着く。
落とし穴
国保の保険料は前年の所得で決まる。仕事が軌道に乗って所得が増えた翌年に保険料が上がり、逆に収入が減った年でも前年の分を払うことになる。
国保の加入・脱退・住所変更の手続きは、事由が生じてから14日以内と、大阪府が案内している。会社を辞めたあと、手続きを後回しにしない。
被扶養者の認定は、収入の見込みと実際がずれると問題になる。130万円(または180万円など)の線以上の収入が見込まれる状態になれば、日本年金機構の案内にあるとおり、被扶養者に該当しなくなる。個別の判断は、市区町村の国保窓口、年金事務所、加入している健康保険の保険者に確かめる。
くらさんの考察
国保と被扶養者のどちらが得かは、収入だけでなく家族の状況で変わる。年130万円という線は、自営の場合、売上ではなく経費を引いた所得で見る点が見落とされやすいと考えられる。逆に、帳簿をつけていない人は経費を証明できず、見込みが高く見られるおそれがある。開業届と青色申告で帳簿を整えること(id 201)は、税金だけでなく保険の面でも役に立つ可能性がある。
ジージへの問いかけ
・ジージの場合、自分で国保に入る立場と、家族の被扶養者になれる立場のどちらに近いでしょうか。
・自宅の仕事で、1年間の所得(売上から経費を引いた額)はいくらくらいになりそうでしょうか。
・保険料の通知が毎年変わる仕組みを知って、収入の見通しを立てるのに何から始めますか。
出典
・大阪府 令和8年度大阪府市町村標準保険料率等の算定結果について https://www.pref.osaka.lg.jp/o100080/kokuho/iryouseido/hokenryouritsu/hokenryouritsu2.html
・大阪府 国民健康保険制度について https://www.pref.osaka.lg.jp/o100080/kokuho/iryouseido/kokuho.html
・箕面市 国民健康保険料の計算(令和8年度) https://www.city.minoh.lg.jp/kokuho/kokuho/hokenryou/h25/2018honsan_hokenryou.html
・泉南市 国民健康保険料の計算方法 https://www.city.sennan.lg.jp/kurashi/kenko/kokuho/1458795178793.html
・日本年金機構 従業員が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/20141202.html
・日本年金機構 労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/jigyosho/2026/202605/0501.html
・大阪府後期高齢者医療広域連合 後期高齢者医療制度の概要 https://www.kouikirengo-osaka.jp/longlife/
・厚生労働省 令和6年度からの後期高齢者医療の保険料について https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_00009.html
動画
・【健康保険】国民健康保険保険料はこう計算する 国保【社労士解説】(【現役世代向け】働く人のお金の窓口)https://www.youtube.com/watch?v=4JfTlt7pwo8
・【2026年4月改正】健康保険の被扶養者の認定における、年間収入(130万円)の判定方法の改正(労働条件通知書等に基づく年間収入の判定)を解説(うえにし社労士の労務セミナー)https://www.youtube.com/watch?v=ExfiuDGnrkQ
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