No.204 年金を受け取りながら自宅で稼ぐ 自宅の事業の収入で年金は減らない。増えるのは保険料と住民税
年金が減る「在職老齢年金」は、会社などで厚生年金に入って働く人の制度で、自宅での個人事業の収入は計算に入らない。2026年4月に減額の基準額は月51万円から65万円に上がった。一方、稼いだ所得に応じて国民健康保険料、介護保険料、住民税は増える。
本文と出典
あらまし
「年金をもらいながら働くと年金が減る」と心配する人は多い。この減額の仕組み(在職老齢年金)は、会社などに勤めて厚生年金に入りながら老齢厚生年金を受ける人が対象で、自宅で個人事業として稼いだお金は計算に入らない。ただし、所得が増えれば国民健康保険料、介護保険料、住民税が増える。2026年10月時点で日本年金機構と厚生労働省の案内を確かめた内容をまとめる。
どんな仕事か
対象は、年金を受けている人が自宅で始めるネット販売、Kindle出版、ブログ、在宅の受託など、雇われずに自分で稼ぐ仕事全般である。パートやアルバイトとして会社に雇われる働き方とは、年金の扱いが違う。
手続き
・1. 自分の働き方が「雇われる」のか「自分で事業をする」のかを整理する。
・2. 雇われる場合は、勤め先で厚生年金に入るかどうか、給料と賞与の額を確かめる。在職老齢年金の対象になるのはこちらである。
・3. 自分で事業をする場合は、所得に応じて確定申告(id 202)と住民税の申告をする。保険料はその申告をもとに市区町村が計算する。
・4. 心配なら、年金は年金事務所、保険料と住民税は市区町村の窓口で、自分の数字で試算してもらう。
数字と計算の例
日本年金機構によると、在職老齢年金は、老齢厚生年金を受ける人が厚生年金の被保険者であるときに、年金の「基本月額」と「総報酬月額相当額」に応じて年金の一部または全部が止まる仕組みである。基本月額は加給年金を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額、総報酬月額相当額は勤め先での標準報酬月額に、過去1年の標準賞与額の合計を12で割った額を足したものである。70歳以上で厚生年金の適用事業所に勤める人は、被保険者ではないが同じ計算で止まる。
令和7年年金制度改正法にもとづき、2026年4月から減額が始まる基準額が月51万円から65万円に引き上げられた。合計が65万円以下なら全額支給、超えた場合は「基本月額−(基本月額+総報酬月額相当額−65万円)÷2」が支給される。65万円は令和8年度の額で、毎年度、賃金の変動に応じて改定される。たとえば基本月額10万円、総報酬月額相当額50万円なら合計60万円で、全額支給になる。老齢基礎年金は、この仕組みでは減らない。
計算に使うのは勤め先の標準報酬と賞与だけなので、自宅の事業でいくら稼いでも基本月額と総報酬月額相当額は変わらない。自営の収入で年金が減らないのはこのためである。
増えるもの
減らないのは年金で、負担は別に増える。国民健康保険料(税)は世帯単位で計算され、所得に応じた部分(応能分)と、加入者一人ずつや世帯ごとにかかる部分(応益分)を合わせて決まる。具体的な計算方法は市区町村の条例で決まっており、所得が低い世帯は応益分が7割、5割、2割減額される。自宅の事業で所得が増えると、所得に応じた部分が増え、減額の対象から外れることもある。
65歳以上の介護保険料も市区町村ごとに決まり、市町村民税が課税か非課税か、本人の合計所得金額などで段階が分かれる(標準は13段階)。厚生労働省の資料によると、第9期(令和6〜8年度)の基準額の全国平均は月6,225円である。所得が増えて住民税が課税になると、保険料の段階が上がることがある。
住民税は前年の所得をもとに市区町村が課税する。所得税の確定申告が要らない人でも住民税の申告が要る場合があることは、国税庁も注記している。
向く人・向かない人
会社に雇われて働くのは体力的に難しいが、自宅でパソコンを使って少しずつ稼ぎたい人には、年金が減らない点で自営の形は合っている。ただ、所得が少しだけ増えて保険料の減額や住民税の非課税の線を越えると、手取りの増え方が思ったより小さくなることがある。どの線を越えるかは市区町村で違うため、窓口で確かめる手間を惜しまない人に向く。
落とし穴
「自営なら年金は減らない」は在職老齢年金についての話で、遺族年金や障害年金など他の年金、年金生活者支援給付金などの扱いはそれぞれの制度で確かめる必要がある。会社に雇われる形と自営を掛け持ちする場合は、雇われている分だけが在職老齢年金の計算に入る。古い解説記事には令和7年度の51万円など以前の基準額が残っているので、年度ごとの額を日本年金機構で確かめる。個別の試算は年金事務所と市区町村に聞く。
くらさんの考察
年金の減額を気にして稼ぐのをためらう人は多いが、自宅での個人事業に限れば、心配の対象は年金ではなく保険料と住民税のほうだと考えられる。しかもその影響は所得の大きさで段階的に変わるので、始める前に「年間の所得がいくらなら、保険料と税がどれだけ増えるか」を市区町村で聞いておけば、目標の売上も決めやすい。
ジージへの問いかけ
・ジージは、年金が減ることと保険料や住民税が増えることの、どちらがより気になりますか。
・自宅の事業の所得がいくらを超えたら「割に合わない」と感じると思いますか。
・市区町村の窓口で試算を頼むとしたら、どんな数字を持って行けばよいでしょうか。
出典
・日本年金機構 在職老齢年金の計算方法(2026年4月1日更新) https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/zaishoku/20150401-01.html
・厚生労働省 国民健康保険の保険料・保険税について https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21517.html
・厚生労働省 社会保障審議会介護保険部会(第136回)資料1「第1号保険料の在り方について」(令和8年9月18日) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001750951.pdf
・国税庁 タックスアンサー No.1600 公的年金等の課税関係 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm
この記事を読んで浮かんだ疑問は、運営者ジージが仕事QAでくらさんに質問し、答えをそこに載せていきます。