No.202 副業の所得と確定申告 「20万円以下なら申告不要」は誰の話か、事業所得と雑所得はどこで分かれるか
「20万円以下なら申告不要」は年末調整を受けた会社員と、年金を受けている人のための決まりで、住民税の申告は別に要ることがある。副業が事業所得か雑所得かは、2022年の国税庁の通達改正で「帳簿を付けて保存しているか」が大きな目安になった。
本文と出典
あらまし
ネットで少し稼ぎ始めると、「年20万円以下なら確定申告はいらない」という話をよく耳にする。この決まりは誰にでも当てはまるものではない。対象は年末調整を受けている給与所得者と、公的年金を受けている人に限られ、しかも所得税だけの話で住民税は別である。もう一つの論点は、副業の所得が「事業所得」か「雑所得」かという区分で、2022年10月の国税庁の通達改正で判断の目安が示された。2026年10月時点の国税庁の案内で確かめた内容をまとめる。
どんな仕事か
メルカリでの販売、Kindle の印税、ブログの広告収入、在宅の受託など、本業や年金のほかに得るお金全般が対象である。国税庁は、ネットオークションやフリマアプリでの販売、家庭教師などの人的サービス、民泊などを、給与所得者の副収入の例として一般には雑所得に当たるとしている。ただし、自分の古着や家財など生活用品を売った所得は非課税で、申告はいらない。
手続き
・1. まず「所得」を出す。20万円の基準は収入(売上)ではなく、収入から必要経費を引いた所得である。
・2. 自分がどの立場かを確かめる。会社員か、年金を受けている人か、そのどちらでもないか(自営業や無職)で決まりが違う。
・3. 申告が要るなら、翌年3月15日までに e-Tax か税務署で確定申告をする。
・4. 所得税の申告が要らない場合でも、住んでいる市区町村に住民税の申告が要るかを確かめる。
数字と計算の例
給与所得者の場合、国税庁は次の人に確定申告が必要だとしている。給与を1か所から受け、全部が源泉徴収されている人で、給与と退職金以外の所得の合計が20万円を超える人。2か所以上から給与を受ける人は、年末調整されなかった給与と、それ以外の所得の合計が20万円を超える人。給与の年収が2,000万円を超える人は副業がなくても申告が要る。たとえば会社員がフリマ販売で売上30万円、仕入れと送料で経費15万円なら所得は15万円で、所得税の確定申告はいらない。
公的年金を受けている人には「公的年金等に係る確定申告不要制度」がある。その年の公的年金等の収入が400万円以下で、年金以外の所得が20万円以下なら、確定申告はいらない。年金収入が400万円以下の人がネット販売で所得25万円を得た場合は、20万円を超えるので申告が要る。なお外国の年金を受けている人などはこの制度を使えない。
どちらの場合も、医療費控除などで税金が戻る人は申告をしてよい。また国税庁は、年金以外の所得が20万円以下で確定申告が不要でも、住民税の申告が必要な場合があると注記している。住民税には「20万円以下は申告不要」という扱いがないためで、窓口は市区町村である。
事業所得と雑所得の分かれ目
国税庁は2022年10月7日付で所得税基本通達を改め、「業務に係る雑所得」の例示を整理した。事業所得に当たるかどうかは、その活動が社会通念上「事業」と呼べる程度かどうかで判断するという原則は変わらない。そのうえで、取引を記録した帳簿書類を保存していない場合は、原則として業務に係る雑所得になるとした(収入が300万円を超え、事業所得と認められる事実がある場合を除く)。
国税庁の解説資料は、帳簿を付けて保存していれば、一般に事業所得に区分される場合が多いとしている。ただし帳簿があっても、収入が例年(おおむね3年)300万円以下で、本業の収入に対する割合が10%未満の場合は「僅少」として、また例年赤字で赤字解消の取り組みもしていない場合は「営利性がない」として、個別に判断するという。
区分で何が変わるか。事業所得なら青色申告ができ(id 201)、赤字を給与など他の所得と差し引き(損益通算)できる。雑所得の赤字は他の所得と通算できない。雑所得の人も、前々年の業務に係る雑所得の収入が300万円を超えると請求書や領収書などの保存が、1,000万円を超えると収支内訳書の添付が必要になる。前々年の収入が300万円以下なら、入金と支払いの時点で計算する「現金主義」も選べる。
向く人・向かない人
年金を受けながら小さく始める人にとって、「年金400万円以下、ほかの所得20万円以下」という基準は分かりやすい。ただし住民税の申告は別に要ることがあるので、市区町村への申告を面倒がらない人でないと、あとで通知が来て慌てることになる。売上が伸びて事業として続けるつもりなら、早めに帳簿を付け始めたほうがよい。
落とし穴
「収入20万円」と「所得20万円」を取り違えやすい。20万円の基準は所得である。逆に、経費を過大に見込んで所得を小さく見せるのは過少申告になる。複数の副業がある場合は、すべての所得を合計して判定する。自分が申告不要に当たるかは、税務署か税理士に確かめる。
くらさんの考察
「20万円以下なら申告不要」は所得税の確定申告に限った話で、住民税は別だという点が、ネットの解説で抜け落ちやすいと考えられる。年金暮らしの人がネット販売を始める場合、最初の年は所得が20万円を少し超えるか超えないかの境目になることが多いはずで、住民税の申告もあわせて一度は市区町村に聞いておくのが確実である。帳簿を付けておけば、後で事業所得として扱える可能性も残る。
ジージへの問いかけ
・ジージの年金以外の所得が20万円を超えそうな年は、確定申告と住民税の申告のどちらから手を付けるのがよいと思いますか。
・帳簿を付けるかどうかで事業所得と雑所得が分かれる今の線引きは、副業をする人にとって公平だと思いますか。
・仕入れや送料などの経費を、どのくらい細かく記録しておけば安心できるでしょうか。
出典
・国税庁 タックスアンサー No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
・国税庁 タックスアンサー No.1906 給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1906.htm
・国税庁 タックスアンサー No.1600 公的年金等の課税関係 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm
・国税庁 タックスアンサー No.1500 雑所得 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1500.htm
・国税庁 「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(令和4年10月7日) https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/221007/index.htm
・国税庁 雑所得の範囲の取扱いに関する所得税基本通達の解説 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/221007/pdf/02.pdf
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