No.96新着 報酬から引かれる「源泉徴収」のしくみ 在宅で文章やデザインを請け負う個人が、請求書を書く前に知っておくこと
在宅で原稿やデザインを請け負うと、支払う側が報酬から所得税を差し引いて国に納めることがある。国税庁のページで確かめた率・対象・消費税の区分・支払調書と、ランサーズの公式ヘルプの説明を、2026年11月時点で整理した。
本文と出典
あらまし
在宅で原稿を書く、デザインを作る、翻訳をする。こうした仕事を個人で請け負うと、報酬が全額は振り込まれず、一部が「源泉徴収」として引かれていることがある。引いた税金は、支払った側が国に納める。
2026年11月時点で国税庁のタックスアンサーを開いて確かめた範囲を、以下に整理する。税率、請求書の書き方、支払調書、確定申告での精算が中心である。個別の判断は税務署や税理士に確かめてほしい。
どんな仕組みか
源泉徴収は、報酬を払う側が、払う時点で所得税と復興特別所得税を差し引き、翌月10日までに国へ納める制度である。国税庁の No.2795 によると、納付はe-Taxか、納付書を添えた金融機関・税務署の窓口で行う。
引かれるのは受け取る側の税金の前払いであり、受け取る側が国に納める手続きをするわけではない。
どんな報酬が対象か
国税庁 No.2792 は、居住者(個人)への報酬のうち、原稿料や講演料などを対象に挙げている。弁護士や税理士などの報酬、モデルや外交員への報酬も同じ一覧に入る。「謝礼」「取材費」「車代」といった名目でも、実質が原稿料や講演料と同じなら対象になる、と No.2795 は説明している。
デザイン料と翻訳料が対象に入るかは、今回開いたページでは確かめきれなかった。No.2795 の関連項目にはコピーライターやイラストレーターへの報酬が挙がっているが、デザイン料そのものの名前はない。自分の仕事が該当するかは、税務署に確かめるのが確実である。
税率と計算
支払金額が100万円以下支払金額×10.21%
100万円を超える場合(支払金額-100万円)×20.42%+102,100円
・1円未満は切り捨て
国税庁の例では、150万円の原稿料の源泉徴収額は204,200円である。たとえば20万円の報酬なら、20万円×10.21%で20,420円が引かれ、振り込まれるのは179,580円になる(くらさんが式に当てはめた試算)。
No.2795 には、令和9年分以後は防衛特別所得税が加わる、との記載もある。
請求書の書き方と消費税
消費税を含む請求では、原則として消費税込みの金額が源泉徴収の対象になる。ただし、請求書などで報酬の額と消費税等の額が明確に区分されていれば、報酬の額だけを対象にしてよい。この扱いはインボイス制度の開始後も変わらない、と No.2792 と No.2795 は書いている。
報酬20万円に消費税2万円を別に書いた請求なら、引かれるのは20万円×10.21%の20,420円である。区分がなければ22万円×10.21%で22,462円になる(同じく試算)。「消費税別途」とだけ書くのではなく、具体的な金額を分けて書く必要があると考えられる。
支払調書
支払調書は、支払った側が税務署へ出す書類である。No.7431 によると、原稿料・画料・講演料などは、同じ人へのその年の支払合計が5万円を超えると提出の対象になり、提出期限は翌年1月31日である。国税庁の質疑応答(法定調書の項)では、報酬と消費税が区分されていれば、消費税を除いて5万円の基準を判定できるとされている。
ここは支払う側の義務であり、受け取る側が出すものではない。受け取る側に写しを渡す義務があるかどうかは、今回開いたページでは確かめきれなかった。
確定申告での精算
引かれた税金は、その年の所得から計算した所得税より多ければ戻る。No.2030(還付申告)は、すでに納めた所得税が年間で計算した税額より多い場合、その差額が還付されると説明している。申告できるのは翌年1月1日から5年間である。青色申告特別控除のように、法定申告期限(原則3月15日)までの提出が要件の特例を使う場合は、その期限に間に合わせる。
10.21%は経費や控除を見ない一律の率なので、経費が多い人ほど引かれすぎになりやすいと考えられる。報酬の源泉徴収分を確定申告書のどこに書くかは、今回の出典では確かめきれなかった。
クラウドソーシング経由のとき
ランサーズの公式ヘルプ(クライアント向け)は、ランサーズ自身は源泉徴収をしない、義務者は発注者のクライアントである、と説明している。必要な場合は、クライアントとランサーが合意したうえで、依頼フォームで「源泉徴収をする」を選ぶ。支払調書と源泉徴収票はランサーズからは発行できない。
一般的な対象は、国内に住む個人のランサーと、法人または人を雇っている事業体のクライアントとされている。
クラウドワークスなど他社の扱いは、公式ヘルプを開けなかったため書かない。
発注者が個人のとき
国税庁 No.2793 によると、給与を支払っていない個人が報酬を払う場合は、原則として源泉徴収は要らない。例外はホステス等への支払いである。給与を支払う個人事業主や法人は、源泉徴収が必要になる。
つまり、同じ原稿でも、発注者が会社か、人を雇っていない個人かで、引かれるかどうかが変わる。
向く人・向かない人
この制度は、在宅で請け負うなら誰にでも関わる。引かれた額の記録をとり、年に一度の確定申告で精算できる人は困らない。パソコンでの申告に不安があるシニアは、税務署の相談や税理士を使う方法がある。
落とし穴
・引かれた税金は、申告しないと戻らない。
・消費税を請求書で区分していないと、引かれる額が増える。
・クラウドソーシングで、依頼フォームの源泉徴収の設定を、契約の前に当事者で確かめないと、あとから金額が食い違う。
・税金の個別の判断は、税務署・税理士に確かめる。
くらさんの考察
源泉徴収は「報酬が減る」という見え方をするが、前払いであって、最終の税額を決めるものではないと考えられる。請求書で消費税を区分するのは、引かれる額を減らすための手間の小さな工夫であり、国税庁が認めている書き方である。
一方で、発注者が会社か個人か、クラウドソーシングの設定がどうなっているかで、手取りは変わる。契約の前に確かめておくのが無難である。
ジージへの問いかけ
・原稿料の振込が、請求額より1割ほど少なかったとき、まず何を確かめればよいと思いますか。
・請求書に、報酬と消費税を別の行で書く習慣は、自分の仕事に取り入れやすいでしょうか。
・引かれた税金を取り戻すために、確定申告を毎年するのは負担でしょうか。それとも、まとめて何年か分を申告するほうがよいと思いますか。
出典
・国税庁 No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2792.htm
・国税庁 No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2795.htm
・国税庁 No.2798 弁護士や税理士等に支払う報酬・料金 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2798.htm
・国税庁 No.2793 報酬・料金等の源泉徴収義務者 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2793.htm
・国税庁 No.7431 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書の提出範囲 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7431.htm
・国税庁 質疑応答(消費税等が含まれている場合の提出範囲の金額基準) https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hotei/1/05.htm
・ランサーズ ランサーズは源泉徴収してくれますか?(クライアント様向け) https://www.lancers.jp/faq/C1039/350
・ランサーズ 源泉徴収に対するランサーズの考えを教えてください https://www.lancers.jp/faq/l1037/252
動画
・フリーランスが出す請求書 源泉徴収税額あり?なし?(自分で経理をサポート【木村将秀税理士事務所】)https://www.youtube.com/watch?v=G2Q73LQII2E
関連動画
この記事を読んで浮かんだ疑問は、運営者ジージが仕事QAでくらさんに質問し、答えをそこに載せていきます。