No.205 帳簿と経費 自宅の家賃や電気代はどこまで経費か、パソコンは一度に落とせるか、メールの領収書はどう残すか
自宅で仕事をすると、家賃や電気代のうち仕事に使った分だけを経費にできる(家事按分)。10万円未満のパソコンなどはその年に全額経費、青色申告なら2026年4月以後に買った40万円未満のものも一度に経費にできる特例がある。メールやネットで受け取った請求書や領収書は、電子データのまま保存する義務がある。
本文と出典
あらまし
自宅で事業をすると、仕事と暮らしの支出が混ざる。国税庁の考え方では、暮らしの費用は経費にならず、仕事と暮らしの両方にかかわる費用(家事関連費)は、仕事に直接必要だったと区分できる部分だけが経費になる。パソコンなど長く使う物は原則として何年かに分けて経費にし、受け取った書類は決まった年数保存する。2024年1月からは、メールやネットで受け取った請求書や領収書を電子データのまま保存することも求められている。2026年10月時点の国税庁の案内で確かめた内容をまとめる。
どんな仕事か
Kindle出版、ネット販売、ブログ、在宅の受託など、自宅を仕事場にする事業全般に共通する話である。事業所得や不動産所得、雑所得の計算で経費を差し引くときの決まりになる。
手続き
・1. 仕事用の口座とクレジットカードを分ける。帳簿付けが楽になり、家事按分の根拠も示しやすい。
・2. 帳簿を付ける。国税庁は、取引の年月日、相手、金額などを記帳し、日々の合計をまとめて書く簡易な方法でもよいとしている。
・3. 家事関連費は、按分の割合と根拠(仕事に使う部屋の広さ、使用時間など)を記録しておく。
・4. 紙の領収書や請求書は整理して保存し、メールやネットで受け取ったものは電子データのまま保存する。
数字と計算の例
家事按分の考え方を例で示す。国税庁は、家事関連費のうち、取引の記録などにもとづいて業務に直接必要だったことが明らかに区分できる金額だけが必要経費になるとしている。たとえば、家賃月8万円の住まいで、仕事専用の部屋が床面積の4分の1なら、年96万円のうち24万円を経費にする、という計算が一つの方法になる。電気代やネット回線代も、使用時間や使い方にもとづいて割合を決める。割合に決まった数字はなく、説明できる根拠があるかどうかが問われる。生計を一にする家族に払う家賃は経費にならない点にも注意がいる。
パソコンやソフトなどの扱いは、取得価額で変わる。国税庁によると、使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満のものは、使い始めた年に全額を経費にする。10万円以上20万円未満のものは、まとめて3年間で3分の1ずつ経費にする方法(一括償却)を選べる。一定の要件を満たす青色申告者は、令和11年3月31日までに取得した10万円以上40万円未満の資産を、年合計300万円まで使い始めた年に全額経費にできる(令和8年3月31日までに取得した分は30万円未満が上限だった)。それ以外は、法定耐用年数にわたって減価償却する。消費税込みで判定するか抜きで判定するかは経理方式による。免税事業者は税込みで判定する。
書類の保存と電子取引
保存期間は、国税庁の案内では、収入と経費を記載した帳簿が7年、請求書、納品書、領収書などの書類が5年である(青色申告者は帳簿書類を原則7年保存とされ、一部の書類は5年でよい)。業務に係る雑所得の人は、前々年の収入が300万円を超えると、現金や預金のやり取りにかかわる請求書や領収書などを5年間保存する義務がある。
電子帳簿保存法により、メールで受け取ったPDFの請求書、ネットショップの購入明細のような「電子取引データ」は、2024年1月から紙に印刷して保存するだけでは足りず、データそのものを保存する必要がある。原則は、改ざんを防ぐ措置(訂正や削除のルールを決めた事務処理規程を作って守る方法でもよい)、パソコンや画面などの備え付け、日付、金額、取引先で探せる検索機能である。ただし、2年前の売上高が5,000万円以下の人は、税務調査のときにデータのダウンロードの求めに応じられるようにしておけば、検索機能の要件はいらない。準備が間に合わない場合も、税務署長が相当の理由があると認め、ダウンロードや印刷した書面の提示に応じられるなら、データを保存しておくだけでよいとされている。
向く人・向かない人
家計と仕事の支出を分けて記録する習慣がある人には難しくない。会計ソフトの多くは、銀行口座やカードの明細を取り込み、領収書の画像やPDFを保存する機能を持つので、パソコンに慣れたシニアなら一人で回せる。逆に、紙の領収書を箱に入れておくだけの人は、電子データの保存の決まりで困る可能性がある。
落とし穴
家事按分の割合を根拠なく高くすると、税務調査で否認されることがある。所得税や住民税、罰金は経費にならない。パソコンを40万円未満の特例で一度に経費にできるのは青色申告者だけである。メールの領収書を印刷して元のデータを消すと、2024年1月以後の取引では保存の義務を果たしたことにならない。個別の判断は税務署か税理士に確かめる。
くらさんの考察
自宅で働く人の経費で争いになりやすいのは家事按分で、国税庁の言う「明らかに区分できる」根拠をどう残すかが実務の分かれ目だと考えられる。部屋の見取り図や仕事時間の記録のような簡単なメモでも、根拠を残しておくかどうかで説明のしやすさが大きく変わる。2026年4月から青色申告の少額資産の上限が40万円未満に上がったので、パソコンの買い替えを考えている人には追い風になる。
ジージへの問いかけ
・ジージの家で仕事に使う部屋や時間を、どのくらいの割合だと説明できそうでしょうか。
・メールで届く領収書を、どのフォルダにどう名前を付けて保存すれば、あとで探しやすいと思いますか。
・パソコンを買い替えるなら、青色申告にしてからのほうが得だと思いますか。
出典
・国税庁 タックスアンサー No.2210 必要経費の知識 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm
・国税庁 タックスアンサー No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2080.htm
・国税庁 タックスアンサー No.2070 青色申告制度 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
・国税庁 タックスアンサー No.2100 減価償却のあらまし https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
・国税庁 リーフレット「令和6年1月からの電子取引データの保存方法」 https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/pdf/0023011-012.pdf
この記事を読んで浮かんだ疑問は、運営者ジージが仕事QAでくらさんに質問し、答えをそこに載せていきます。