No.1000275新着 「けん玉」はなぜ海外のストリートで跳ねているのか——広島・廿日市で生まれ、山形・長井が競技用を支える木の玩具
海外の公園やスケートパークで、木とひもでできた日本の玩具が跳ねている。玉を皿に乗せ、剣先に挿す「けん玉」は、いまや競技やストリートカルチャーとして各地に広がり、専用ブランドや世界大会まで生まれている。国内では昔ながらの遊びでも、海を渡ると少
本文と出典
海外の公園やスケートパークで、木とひもでできた日本の玩具が跳ねている。玉を皿に乗せ、剣先に挿す「けん玉」は、いまや競技やストリートカルチャーとして各地に広がり、専用ブランドや世界大会まで生まれている。国内では昔ながらの遊びでも、海を渡ると少し違う顔を見せる。
けん玉の原型は、広島県で形になったとされる。1919年(大正8年)、玉を太陽、皿を月に見立てた「日月ボール」が実用新案に登録され、考案者はその製造を、木工の盛んな廿日市(はつかいち)に託したと伝えられている。登録日の5月14日は、のちに「けん玉の日」とされた。この発祥の由来が、のちに世界大会の開催地にもつながっていく。
現在、競技用けん玉づくりの中心は山形県長井市にある。地元では「競技用けん玉の生産日本一のまち」と位置づけられ、代表的なつくり手である山形工房は、日本けん玉協会の公認球を半世紀にわたって手がけてきた。大会や検定で使う一球は、玉の重さや塗装、糸の長さまで規格が細かく、遊び道具というより競技用具に近い。
その競技用けん玉は、海外へも出ている。山形工房の案内では、これまでに40を超える国々へ輸出してきたと紹介されている。2015年のミラノ万博でけん玉文化を伝える場面があったことも、同社は紹介している。国内の遊びが、競技の道具として海外の売り場に並ぶ流れである。
海を渡ったけん玉は、別の進化もたどった。海外のけん玉を論じる記事では、2010年代にアメリカの若者がヒップホップやスケート文化とけん玉を結びつけ、派手なトリックを競う「ストリートけん玉」が広がったと説明されている。Kendama USAのような海外ブランドが生まれ、その熱が逆輸入される形で日本の若い世代にも届いた、という見方も紹介されている。ここは発信者の立場によって語り口が変わりやすい部分で、どこまでが実態かは割り引いて読む必要がある。
この広がりを束ねているのが、2012年に設立された一般社団法人グローバルけん玉ネットワーク(GLOKEN)だ。代表理事の窪田保さんのもと、2014年から発祥の地・廿日市で「けん玉ワールドカップ」を毎年開いてきた。過去の大会では十数の国・地域から選手が集まったと伝えられ、2025年も11月に廿日市で開かれた。優勝争いの常連には、海外ブランドに所属する選手も少なくない。
GLOKENは大会だけでなく、技の難易度を段階化した「けん玉検定」や、指導者資格「けん玉先生」の仕組みも整えてきた。検定は2019年にアメリカでも始まり、2026年8月には、ミネソタ州で開かれた北米の大会「North American Kendama Open」にスタッフが参加したと同団体は報告している。遊びを競技として海外へ渡すための、共通のものさしづくりが続いている。
一方、生産地の長井市は、けん玉を軸にしたまちづくりを進めてきた。2014年度に始まった「長井けん玉のふる里プロジェクト」では、市内の店で決められた技を成功させると特典がもらえる「けん玉チャレンジ」を展開している。飲食店で「とめけん」を決めるとアジフライが一枚、自転車店で「飛行機」を一発で成功させるとパンク修理代が半額——という具合で、参加店は50を超えるという。市は2020年、条例でけん玉を「市技」に定めたとされる。
生まれた町、競技用を支える町、そして遊び方を塗り替えた海外。けん玉は、一つの産地だけで完結しない商品になった。木とひもだけの単純な道具が、いまも国境を越えて跳ね続けている。
今日の話題動画
けん玉の「遊び」としての熱量が伝わる一本として、YouTubeチャンネル「Kendama!!!!!」の「5連.10連.20連けん玉対決で…」を取り上げる。公開から1週間ほどで約458万回再生されている動画で、複数人が横一列に連なり、玉を次々に受け渡しながら技を決めていく“連けん玉”の様子が紹介されている。一人で黙々と練習する競技の顔とは別に、集団で盛り上がれるエンタメとしての一面が見てとれ、海外での広がりを支える下地のひとつがうかがえる。
参考記事
有限会社山形工房(競技用けん玉メーカー)https://kendama.co.jp/
・GLOKEN(一般社団法人グローバルけん玉ネットワーク)について:https://www.gloken.net/jp/about/
けん玉ワールドカップ 公式サイトhttps://kendamaworldcup.com/
・競技用けん玉の生産量日本一! 長井けん玉のふる里プロジェクト(東北観光推進機構):https://www.tohokukanko.jp/attractions/detail_1004531.html
けん玉の日(日月ボール・江草濱次の由来)https://bestcalendar.jp/dates/kinenbi/2336
・今日の話題動画「5連.10連.20連けん玉対決で…」(YouTube/Kendama!!!!!):https://www.youtube.com/watch?v=q1Y0JgaQC9Q
(この記事は旧サイト shop.shizuku.net から移しました。元の記事: https://shop.shizuku.net/2026/10/15/kendama-overseas-popularity/)
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